スライム魔導師

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スライム魔導師

 バッハンが、洞窟へ声をかけると奥の方から何か光るものが、入口に向かって跳ねてきました。金色のスライムが出てきました。 「誰だ! 私に何のようだ…なんだ、バッハンか…」 「スライム魔導師殿…例の者を連れてきました…」 「怖い…でかいまんじゅうみたいな、もののけが出てきて…しゃべった…」 「この若者なら、悪徳強欲王女をぎゃふんと言わせられると思います…」 「何、この者が、選ばし者か…スペック!」  スライム魔導師は、呪文をつぶやき、伊吹に光を浴びせました。すると四角い板のような物が、伊吹の前に出てきました。何か、文字のように物が浮かびあがりますが、伊吹には全然読めません。 「どれどれ…おお、凄い…戦闘力、素早さ、魔法力が高い、なんとイケメンがMAX…あとの項目は鍛えれば良いか…ただ、弱虫スキルが邪魔だが…」 「スライム魔導師殿…いかがですか?」 「うむ、やってみよう…ただ、心配もある…バッハンも一緒についてやってくれ…」 「わかりました…」 「なに、なに、…何が起こってるんだ?」  伊吹には、目の前で起こってる事が全然わかりません。また、スライム魔導師が何かを唱えると伊吹にまた、光が当たりました。 「ワールドリカイ!」  伊吹は、一瞬にして、この異世界ファンタジー星の事を理解しました。 「なるぼど、ここは魔法という術を使う世界ですね…凄い…そして、悪の姫がいるのですね…みんな困ってるのですね…」 「伊吹よ…ここで修行して、悪徳強欲王女を懲らしめてくれ」 「えっ、悪徳強欲王女、怖いでしょ…」  スライム魔導師は、伊吹のお尻に向かって、おもいっきり、跳ねました。伊吹のお尻に命中しました。伊吹は、お尻を叩かれるとやる気が出るタイプでした。 「痛い…でもやる気出てきた…理不尽な要求を力づくで、弱い者をいじめる悪代官のような者ですね…ゆるせん」 「良く言ったのう…」 「伊吹さんお願いします…」  スライム魔導師は、伊吹の能力ボードの備考欄に『尻を叩かれるとやる気が出るタイプ』と書いてあったのを見逃しませんでした。    この世界は、悪徳強欲王女の『ヨギン』が、魔四天王を使い、お宝と言われるものを理不尽に集めていました。バッハンの大切なヴァイオリンのような楽器の弓も騙されて取られてしまいました。  強力な魔四天王によって、王女は守られているので、滅多な事では近づけません。実は、スライム魔導師は、王女ヨギンに仕えていましたが、王女ヨギンのあまりの横暴さに意見を言ったところ、下等生物のスライムに変化させられました。  スライム魔導師は、知恵と魔法力が強かったので、『スライムゴールド』になり、記憶と知恵と魔法力は、そのままでいられましたが、この洞窟で隠れて暮らす事になりました。  いつか、王女ヨギンの行いを正す機会を狙ってました。そして、バッハンに反撃できる助っ人を探してくるよう相談していました。  スライム魔導師は、伊吹の魔法力を試すためにテストを始めました。まずは、伊吹の魔法の属性を調べました。 「伊吹よ、まずは、魔法に慣れるのじゃ…まずは、魔法の属性を調べるか…ゾクセイ!」 「魔法のぞくせい?」 「あの岩に向かって、何も考えずに腕を前に出して、振り下ろすのじゃ…」  伊吹が、腕を振り下ろすと火柱が光をまとい、岩に一直線に向かいました。そして、大音響と共に岩は消滅してしまいました。 「えっ、何か手から火が出た…怖い…」 「これは、珍しいのう…火の属性と光の属性が、一緒に出て、最後は闇の属性で、砕けた岩を消失させたわ…」 「導師殿、私もこんな力、見たことありません…」  どうやら、伊吹は勇者級の魔法力を兼ね備えているようで、本人は一切、その自覚がありません。初めて出した魔法にぽかんとして、火が出た手先を見ていました。
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