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「ムチ打ち100回、その後、犯罪奴隷として鉱山送りと処す」
「嫌だー!」
「ウルサイ! 黙れ!」
「次! 鋸引きで四肢切断、その後、火炙りの刑に処す」
俺の生き残った手下たちに次々と刑が言い渡されていく。
俺は貴族の私兵程度では討伐出来ない程巨大化した盗賊団の頭だった。
そんな訳で調子に乗り、王弟の治める公爵領の領都を襲撃して逃げ損なった貴族や領都民の財産を強奪し、面白半分に殺しまくったのが悪かったんだな。
俺たちを討伐するのに近衛騎士団と王宮魔法師団の精鋭が送り込まれ、俺と十数人の手下が何とか生き残り捕らわれた。
まあ言い渡されている刑を聞く限りあそこで殺された方が良かったかも知れんがな。
「最後、把握しているだけで数千人の命を奪った極悪人である盗賊団の頭にはそれ相応の刑を与える」
お、やっと俺の番か。
「おやすみの刑に処す」
はあ?
なんだそのホノボノとした刑は?
首に魔法封じの首輪を嵌められ、此れでも王宮魔法師団の上位クラスと互角くらいの魔力持ちなのさ。
近衛騎士団の団長や王宮魔法師団の筆頭魔法師を含む10数人のクソ共に囲まれて、俺は公開ムチ打ちが始まった刑が言い渡されていた処刑場の地下深くに連れて来られた。
おやすみの刑について聞こうとしたが、口を開く度に殴られるんで聞くことを絞める。
連れて来られた処刑場の地下深くには縦横が数百メートルはある空間があり、等間隔に縦横深さが5メートル程の穴が掘られていた。
その内の幾つかの穴には透明な素材でできた蓋がされていて中にミイラが転がっている。
空間の中は乾燥していて空間を囲む壁や天井に地面、等間隔に掘られている穴の中、透明な素材の蓋全てに見たことが無い魔法陣がびっちりと彫られていた。
等間隔に掘られている穴の中に俺は入れられる。
穴の一方の角に排泄用の小さな穴がある以外は何も無い。
水が入った袋と食い物が入った袋が投げ落とされ蓋が被せられた。
此処が俺の終の住みかになるのか。
やることも無いので横になり目を瞑る。
「ギャアァァーー!」
俺は悲鳴を上げながら飛び起きた。
縛られたまま小さな小屋に閉じ込められ外から小屋に火が放たれ、
芋虫のように這いずることしか出来ない俺に火が追い付き俺の身体を焼く。
水を飲み落ち着いてからまた横になり目を瞑る。
「ギャアァァーー!」
また飛び起きた。
手を後ろ側で縛られたまま狼の群れの中に放り込まれ、逃げ回る俺の身体の肉が狼に次々と食いちぎられる。
どういう事だ?
寝る度に悪夢を見るなんて。
「それがおやすみの刑なのさ」
突然頭上から声が掛けられる。
上を見ると宮廷魔法師筆頭が顔に笑みを浮かべ俺を見下ろしていた。
「どういう事だ?」
「お前は此れから寝る度に悪夢を見るのだ」
「寝る度に悪夢だと?」
「ああ、お前が直接殺したのか手下に殺らせたのかは知らないが、お前のせいで痛みにのたうち回り苦しんで死んでいった人たちの最後の体験を、お前自身が体験するのさ夢の中でな」
「寝せないのが刑なのか?」
「否、寝る寝ないを選択するのはお前の自由さ、ただ、眠る事を拒否して狂い死にを目論んでも無駄だ。
彫られている魔法陣の中には囚人を狂い死にさせないようにする物もあるからな」
「チクショー!」
俺はその後知らないうちに眠りこけ悲鳴を上げて飛び起きる事を繰り返す。
数十回数百回それを繰り返した。
もう嫌だ、眠る度に飛び起きるなんてもう体験したく無い。
死のう、死ねば解放される。
俺は自分の頭を掴み力一杯捻った。
「オ~イ、聞こえるか?
私は以前教えたよな、寝たら悪夢を見ると。
人が死んだとき永遠の眠りについたと表現する事もあるって知ってるかい?
お前は此れからその肉体が朽ちるまで悪夢を見続けるのだ。
お前の身体はミイラとなり朽ちる事は無い、この空間が乾燥しているのはその為でその為の魔法陣も彫られている。
お前の魂が此処から出られないようにする魔法陣も彫られているから逃げる事は不可能だ。
おやすみ、未来永劫良い悪夢を見続けてくれ。
じゃあな。
ハハハハハハ」
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