time pass me by

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彼を意識し始めてふて気づくと、彼はけっこう周りの女子に人気があって私の心は複雑だった。 彼はもちろん、私のものではない。 けれど、私の横の席の彼が私に背を向けて別の女の子と話したり、同じ運動部の女の子と親しげに話をしたりすると、どうしようもなく気持ちがもやもやしてつらく、聞きたくもないのに聞いてしまう裏腹な感情で気分が落ち込む。 千里さんと話しをしていてもどこか上の空で、それを千里さんに悟られないようにうまく相づちを打っているつもりだけど、グイッと腕を引っ張られてハッとする。 「鈴、いいの〜?知らないよ〜?加藤とられても〜?」 わざと聞こえるように言うから背中を向けていた加藤が振り返って「なんだ?」と言うから私の鼓動は早くなり、心の中で『どうして余計なこと言うの〜』と言葉を噛み締める。その様子を千里さんはいつも余裕たっぷりに見ているから、さぞ私の慌てぶりは面白いだろう。 私はいつも一言一言に過敏に反応してしまうから千里さんが何を言い出すのか気が気じゃない。それでも加藤と話すきっかけを作ってくれるのは千里さんだから文句も言えない。あぁ、、私にも加藤ともっと話せる自信と勇気があれば・・・・。そう思いながらも、 私に向けた背中がそっと触れる時の体温だけで彼の気持ちを推し量ることしか私には出来なかった。誰でもない私にだけ触れてくれているのだと思うより仕方なかった。
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