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第一話
――――ジリリリリリリリリリ!!
「ウワッッ!!」
大きく高い音が突然鳴り響き、私はグアッと目を覚ました。
そして、急いで音の鳴っている場所を探し、止めにいく。
――――カチャッ
「はあ、びっくりした。目覚ましか……ってここはどこ?」
反射的に止められたものの、その目覚まし時計は見知らぬ目覚まし時計だった。そして、周囲を見渡してみると、見たこともない壁、ベッド、棚棚棚。
「なにこれ、どこ?」
違和感を覚え、急いで自分の体に目を向けてみると、赤色のパジャマに身を包んだ締まった体が現れた。
「え?なに?私ってこんな体だったっけ?えっと……?」
こんな姿の自分は初めて見る。どうしたものか。
身に覚えのない世界と自分に、戸惑っていると、誰かがこの部屋に勢いよく入って来た。
――――バンッ!
「お姉ちゃん遅刻するよ!部活!急ぎなって!」
そう叫ぶ女の子は、心配そうに私を見ていた。顔をくしゃっとして、急げと怒っているようにも見える。
って、お姉ちゃん?私に妹なんていたっけ……?
あれ、今、私は夢を見ているのかな?
私は首を傾げる。
だって、私に妹がいる記憶なんて出てこないし、まず、こんな体ではないと思うし。
でも、とりあえず今はこの子に返事をしなければ。
「あ、うん、急ぐ……ね?これから部活?どうしたらいい?何に着替えるの?荷物って、どこだっけ……あ、荷物は玄関。通学は制服。そうだ、理解してきた、うん」
「お姉ちゃん、大丈夫……?具合悪い?」
「あ、思い出したよ、うん。大丈夫」
今、私は全ての記憶を理解した。
この身体の中の人の生活、考え方、生き方、そういった記憶。
全て。
だから、とりあえず、今日はこの人の記憶に従って行動することとしよう。
今日、生活する為の情報を得たのだから。
どうせ、これは夢だろう。
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