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5
「起きてっ、起きてっ。朝だよ」
ホープに身体を揺さぶられ、声を掛けられ、僕は目を覚ました。
そうか……もう朝なのか。
太陽の光が、眩しいな。
僕が身体を起こすと、ネチャッという嫌な音がした。
着ていたパジャマは最早原型を留めておらずボロボロでほぼパンツ一丁状態であった。
パンツだけでも残ってて良かった……ホープに汚い物を見せずに済んだし。……毎朝、それだけが心配なんだよなぁ……。
とりあえず、先ず顔を洗って歯を磨いてから、この血塗れで穴だらけのソファーをどうにかする事にしよう。
つーか今日あんまり血が流れてねぇな……心做しか、銃弾の数が少なくなっているような気がするぞ。
うん、ホープも少しずつ成長してるって事だな。良い兆候だ。
「さっ、いつまでも血の海に座ってないで、さっさとお前も顔洗えよ。もうすぐ朝ご飯だ。送れるとアースさんに叱られるぞ」
「あ、あの――」
「ん? 何だ?」
「いつもいつも……毎晩毎晩、ありがとう。……あなたのおかげで、私はいつも気持ち良い朝を迎える事が出来るようになった……本当に、ありがとう」
「……お礼とか今更だろ? 気にしないで良いよ。あ、でもそうだな……それ程までに僕に対して恩を感じているのなら――君が力の暴走を克服した後も、僕と一緒に寝てくれたら、嬉しいな」
「……えっち……」
「はははっ」
顔を真っ赤にしているホープも可愛いな。
それから僕達は隣に並んで顔を洗い、歯を磨き、一緒に部屋を出て、二人並んで長くて広い豪勢な廊下を歩いて、食堂へと向かう。
途中、ホープがこんな事を尋ねて来た。
「ねぇ……毎日死ぬのって、怖くないの?」
僕は答えた。
即答した。
「慣れてるから、全然怖くないよ。僕は」
その答えを聞いたホープは苦笑い。
「羨ましいような、羨ましくないような……反応に困る返答だね」
「だってそれ以外に答えがないんだから仕方ないだろう」
「そっか……」
そう……僕にとって、今の質問の答えはそれ以外に思い付かないのだ。
死が怖い――そんな気持ち、とうの昔に忘れてしまった。
何故なら僕は、これまで数万回と言っていい程――死んでいるのだから。
いや、正確には今こうやって生きているのだから死んではいないのか? まぁ、その辺の解釈はどうでもいいので置いておいて。
そう言えば一人、紹介し忘れていた事を思い出した。
本来なら一番初めに紹介しなくちゃいけない事を、すっかり失念してしまっていた。
やってしまった。という感じだ。
あっちゃー……という感じだ。
僕……――
自分の紹介……自己紹介、まだしてなかったよね?
そんな訳で、今更ながら僕の紹介をするとしよう。
僕はピースメーカー、最後の一人。
世界最強と呼ばれる十二人の内の一人。
ピースメーカー内での序列は十一位。
巷では『不死霊王』
メンバーからは、ゾンビと呼ばれている。
僕の力は呼び名の通り、不死。
まぁ、厳密に言うとそれだけでは無いのだけれど……とにかく僕は、誰からどんな攻撃を受けようと絶対に死なない。
一〇トントラックに轢かれても、どれだけ刀で切りつけられようとも、真っ黒焦げに燃やされても、雷に撃たれても、海に沈められても、酸素がなくなっても、宇宙に追放されても、どんな超能力を浴びせられても……そして――
拳銃で蜂の巣にされようとも。僕は絶対に死なない。
ゾンビと呼ばれる程の超自己再生能力が発動し、絶対に死なないのだ。
だからこそ、僕はリーダーからホープの事を任された。
死なない僕だからこそ、ホープの添い寝が出来る。
ホープの身代わりになれる。
ホープの事を、守る事が出来る。
「あっ、もうこんな時間っ! 急がないと、アースさんに怒られちゃうよ! 行こっ! ゾンビくん!」
「……ああ。そうだな」
この、強過ぎて可愛いすぎるこの子の未来を繋ぐ事が出来るのは、僕だけなのだから。
この子を守る為なら、僕は何度でも命を捨ててやる。
そう……何度でも。
気味の悪い……僕みたいな化け物が役に立てるのなら。
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