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斯様な思いからMASSを避け、鴨長明のように世を捨て方丈記に倣って山奥に庵を建て自給自足の生活をする横紙破りな男がいる。彼は今日も今日とて自然を愛し、自然と戯れ、自然の中で休息している。嗚呼、なんて僕は自由で幸せなんだろうと孤独を愛しながら・・・
彼は休んでいる時以外も頭を働かせ、知恵を養い、知恵を蓄える。だから何年かのち、ツァラトゥストラのように知恵を授けるべく山を降りて人々の前で講釈するかと言うと、そんな真似はそれこそ無駄なことだとして絶対しないだろう。豚に真珠で幾ら金言を述べても空しくなるばかりで大衆を感化することは到底、不可能だから馬鹿を見るだけだと悟り切っているからである。
そんな彼を敬愛して彼と一蓮托生して山暮らしをする女がいる。彼女は木陰で休む彼を見つけたならば、そこへやって来て彼にべったり寄り添うのである。真夏なぞは二人は腰に葉っぱと蔓で作った陰部隠しを身に付けているだけだから肌と肌を擦り合わせることになるが、暑苦しくなるどころか無上に心地よくなるのである。宜なるかな彼らは美男美女にして相思相愛なのだ。こうして一緒になるのは野生児の血が流れている上に高尚だからだろう、それにしても彼女も見上げたものである。巷で軽々しく謳われる奇跡的な出逢いで誕生した在り来たりなカップルとは訳が違う。こんな正真正銘の奇跡的且つ高踏的なカップルが他にあるだろうか、まずないだろう。だからアダムとイヴの生まれ変わりのように百花繚乱と咲き乱れる花の絨毯の自然美に溶け合いながら熱く篤く契る二人の光景は、ファンタジーの世界でしかお目に掛かれないと言って良いくらい世にも稀なるもの、否、ファンタジーの世界でも例がないことだから見ようと思っても到底見られるものではない。これぞ究極のファンタジー・・・
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