帰りたい

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私と同年代ぐらいに見えるその女。 問題は、そのドレス。 同じ長袖のワンピース風。 同じライトグリーン。 同じ高級感のあるレース仕立て。 同じ表面の細かいラメ。 何が起きているのか一目でわかった。 かぶっている。 完全にドレスがかぶっている!!! 鳴り響く拍手とカメラのシャッター音が ノイズ音のように歪んで聞こえた。 女も、ものすごく嫌そうな顔をしている。 ……気まずい。 咄嗟に髪を直すフリをしてみる。 ……だめだ、やはり気まず過ぎる。 「それでは記念写真を撮りますので、 ブーケを受け取った方もどうぞ前にお越しくださーい!」 ナイスタイミング司会者!! 戸惑いながらその女は前に出ていった。 私は即座に、ずっと隣にいた穂乃花に囁いた。 「……服……かぶった……」 自分でもどこから出してるんだというぐらい低い声が出た。 状況を全て察したのか、 穂乃花は私の肩に手を置いて言った。 「だ、大丈夫大丈夫」
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