帰りたい

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穂乃花の服の袖をつかんで引き留めるように言った。 「うわっ……さっきの人いる……」 「……ど、ドンマイ……」 流石に穂乃花もこの状況には大丈夫と言ってくれなかった。 もう全てを諦めよう……。 渋々テーブルに近づいた。 向こうもこちらに気付いて困った顔をしている。 (以後「」と呼ぼう。) 苦笑いで会釈すると、 服かぶり女も同じく苦笑いで会釈を返してきた。 とりあえず、席についてみるものの、 全員目を逸らして沈黙。 『地獄の晩餐会(ばんさんかい)』の図だ。 「……り、料理楽しみだね〜」 「……そだねー……」 穂乃花が耐えきれないように口を開いたが、 棒読みでしか答えられなかった。 穂乃花、すまない。 その時、奥のテーブルにいる前島くんが目に入った。 相変わらず男性陣と楽しそうに話している。 そういえば、服かぶり事件に気を取られっぱなしだったが、 まだ一言も言葉を交わしていない。 向こうもこっちに話しかけてくる様子もないし、 このまま挨拶もせずに終わってしまうのかな……。 そんなことが頭をよぎった。
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