23人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふう、やっと寝てくれたよ」
たーくんを抱きかかえた男が戻ってくる。息子をベッドの上にそっと下ろすと、「あれ?」と窓に近付いた。
「明日は年に一度の逢瀬の日だよね。晴れるといいね」
そう言いながらてるてる坊主に手を伸ばす彼。なおすように見せかけて、毎年てるてる坊主を逆さまに吊るしている彼。
「ふふ。そうだね。でも、彦星くんは、私にとって『ただの友達』だよ」
立ち上がり、男の頬にキスをする。
「愛してるのはあなただけ」
「そんなこと言ったって、あっちとの婚姻関係は続いてるんだろ?」
目をそらされる。さりげなく距離を取られる。
「今年こそ、ちゃんと別れてくるから!」
男は織姫に背を向け、ひらひらと手を振った。
「明日に備えて早く寝たら? おやすみ」
男が寝室を出て行く。てるてる坊主は、頭が上になった状態でくるくると回っていた。織姫は目を背け、授乳を続ける。
最初のコメントを投稿しよう!