七夕前日【織姫の場合】

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「ふう、やっと寝てくれたよ」  たーくんを抱きかかえた男が戻ってくる。息子をベッドの上にそっと下ろすと、「あれ?」と窓に近付いた。 「明日は年に一度の逢瀬の日だよね。晴れるといいね」  そう言いながらてるてる坊主に手を伸ばす彼。なおすように見せかけて、毎年てるてる坊主を逆さまに吊るしている彼。 「ふふ。そうだね。でも、彦星くんは、私にとって『ただの友達』だよ」  立ち上がり、男の頬にキスをする。 「愛してるのはあなただけ」 「そんなこと言ったって、あっちとの婚姻関係は続いてるんだろ?」  目をそらされる。さりげなく距離を取られる。 「今年こそ、ちゃんと別れてくるから!」  男は織姫に背を向け、ひらひらと手を振った。 「明日に備えて早く寝たら? おやすみ」  男が寝室を出て行く。てるてる坊主は、頭が上になった状態でくるくると回っていた。織姫は目を背け、授乳を続ける。
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