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再会
「会いたかったよ」
「私もよ。こうして会うのは何年ぶりかしら」
七月七日、天の川の上、カササギがかけた橋の真ん中で、再会の喜びをわかちあうのは、言わずもがな織姫と彦星である。
織姫は彦星の腕に自分の右腕を絡ませる。前に、つまり彦星が住んでいる島の方向へと歩き出す。
「行きましょ」
「どこへ?」
彦星は織姫に引っ張られるようにして、彼女についていく。
「決まってるじゃない。ディナーよ」
織姫は「ちゃんと予約してくれてるんでしょうね?」と彦星を見上げる。
「当然。織姫ちゃんに会えると思って奮発しちゃいました!」
「嬉しいわ」
彦星が親指を立てると、織姫は口元に手を当てて上品に微笑んだ。
織姫と彦星が天の川を隔てて生活をするようになってから十年。あの頃は新婚ほやほやだったから、仕事が手につかないほどイチャイチャしていたのよね、と織姫は当時のことを思い返す。
歩きながら彦星の顔を盗み見ると、十年分のシワが刻まれている。機織りや家事で潤いがなくなった自分の手を見て、織姫はため息をついた。
「お互い歳をとったわね」
織姫の呟きに、彦星は「なんだよ急に」と笑う。
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