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しかしながら、何度編集部に足を運んだところで、彼からは色よい返事どころか、検討しますの一言すら得る事ができなかった。
代わりに僕に与えられたのは「なんかどっかで見た事のある話なんだよなぁ」「四コマ漫画を引き延ばしたみたいな冗長な漫画だね」「これって〇〇のパクリ?」「ナルシシズムとマスターベーションの塊みたいで嫌悪感しか感じない」といったありとあらゆる否定の言葉ばかりだった。
新人賞を得た事によって手に入れた僕の自信はあっという間に打ち砕かれ、くたびれた雑巾のように心と体がくたくたになってしまっても、僕はひたすらに漫画を描き続けた。
僕を女手一つで育ててくれた母は、僕が大学に進学するのと時を同じくして再婚していた。卒業しても、僕に帰る家はない。僕にとって商業作家の道は、これから先の将来を自分自身の力で生きて行くための唯一の手段だったのだ。そのためには、何が何でも在学中に連載を勝ち取る必要があった。
卒業を迎えてしまえば、生活のために働かざるを得ないだろう。そうなれば、漫画を描く時間は激減する。二十四時間、生活のほぼ全てを描く事に捧げても編集者の分厚い壁をぶち抜けないというのに、仕事の片手間に描く漫画でどうにかできるとは思えなかった。
残された時間は少ない。
どんなに打ちのめされようとも、描き続けるしかない。
そうして一心不乱に漫画を描く僕を、影に日なたに支えてくれたのが、同級生の達仁だった。
講義の間も黙々と漫画を描き続ける僕に、他の学生達は奇異な目を向けるだけだったにも関わらず、達仁だけは僕の描く漫画に興味を持ってくれたのだ。
「俺は面白いと思うんだけどなー。お前の描く漫画、目茶苦茶好きだよ」
編集者にけちょんけちょんに貶されたネームも、彼はそう言って褒めてくれた。
彼は大学生活もままならない僕のために代返を買って出、テストになると大量の過去問とともに最低限の点数を採るための策を授けてくれた。バイト先のスーパーで貰って来たという廃棄弁当や菓子パンを大量に届けてくれる事もあり、僕の大学生活は達仁なしでは成立しないぐらい、彼に助けられっぱなしだった。
彼の恩義に報いるためにも、絶対に在学中に連載を勝ち取ってやろう。
そう、強く心に決めていたのだが――
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