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封筒には手紙と一緒に、達仁の署名捺印が施された離婚届が同封されていた。
呆然と達仁の残していった手紙を見下ろしている内に、不意に涙がこみ上げてきた。
ポツリ、ポツリと滴り落ちる雫は剥き出しのフローリングを濡らし、部屋の中に薄暗い影を落とした。
どうして気づいてあげられなかったのだろう。
どうして素直になれなかったのだろう。
嘘をついていたのは、僕の方だって一緒なのに。
彼は、何の好意もない相手とパートナーとして婚姻関係を結ぶ程、僕が打算に生きる人間だと思っていたのだろうか。
僕だってともすれば溢れそうになる彼への想いを必死に包み隠しながら生活してきたというのに。
僕が漫画家としてがむしゃらに頑張って来たのは、一刻も早く彼の庇護から抜け出して、対等な存在になりたかったからだというのに。
僕達は法的にパートナーとしての関係を結びながらも、お互いに素直な想いを打ち明ける事もできずに暮らして来たのだ。こんなにも馬鹿馬鹿しい事があるのだろうか。
立ち上がった僕は、手の中の離婚届を握りつぶした。
床と壁が剥き出しになったがらんどうの部屋を、あの日と同じように橙色の夕陽が静かに照らしていた。
〈了〉
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