第1話 優等生と不良少年

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第1話 優等生と不良少年

全ては、あの日が始まりだった。 〝いい子〟であることを生き甲斐にしていたあの頃。その日で全て壊れた。 3年前ーーー。 中学2年の時だ。 ちょっとボロいアパートで母親と暮らしていた初原珠葵(ういはら たまき)。 〝いい子〟だね。と褒められたくて何でもした。 「お母さん!」 「珠葵、おはよう。 今日、学校お休み?」 都内の総合病院で入院している母親の絵美(えみ)。 女手一つで、珠葵を育てた。 「うん!」 「珠葵、ちゃんと勉強して、いい男見つけなよ」 「お母さん、またそれ?勉強は、するけど。彼氏は、出来たらでいいや」 「あははははっ!」 多分、それが遺言だ。 こんなこと、たまにしか言わないから。 嫌でも分かる。 神様、まだ、連れていかないで欲しかった。 ピーーーーー。 個室に響き渡る心停止音。 絵美は、中学生の娘を置いて空へ渡った。 末期癌を患った絵美は、余命3ヶ月と言われていた。
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