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第18章 少し恋に似た何か
季節は夏場。わたしたちは床につく直前のタイミングだった。つまり脱がすのにほとんど手間のかからない程度の装いしか身につけてはいない。
シンプルな薄手のコットンのルームウェア上下。その下に一応下着としてキャミソールをつけてるけどそれだけ。呆気なく奴の手がするりと裾から胸まで届いた。
直に肌を弄られ思わずぎゅっと目を閉じる。やっぱり。…想像してたより、結構。…怖いな。
哉多の興奮に弾む声がやけに甘く響く。
「すごい、すべすべだな。何でこんなにひんやりしてんの、お前?」
汗が冷えたんじゃないの。と思うけどよくわかんない。わたしは身をよじり、息を弾ませて言い返した。
「哉多の手は。…すごく、熱いね。何だか」
これは本当。自分の肌が冷えてるんだな、とその感触で初めて実感する。大きな熱い手のひらで胸を覆われると。変な意味じゃなく、じんわりと。気持ちいい…。
奴はきっぱりと自信を持って答えた。
「めちゃめちゃ興奮して、のぼせてるから。…もう、いいよな。全部一気に脱がすよ」
それから裾を掴んで、キャミソールと重ねてひと息に頭からすぼっ、と引き抜いた。
反射的に腕で胸を隠そうとするのをぐい、と押さえつけて阻止された。
「ちょっと。…何」
「いやお前こそ。…何で隠すの?もういいだろ、俺たち。これからするんだよ?他人じゃないじゃん」
したら他人じゃなくなるって初耳だ。だったら仕事で不特定多数とする職業の人はどうなるんだ?
奴は遠慮なくわたしの両腕を脇に押さえ込み、上からつくづくと思う存分眺めた。その目線にいたたまれなくてかあっと耳が赤くなる。今更ながら部屋の明かりを落とすよう頼まなかったのが悔やまれた。正直そんなところまで考える余裕、全然なかった。
「お前寝るときブラしないんだ。いつもそうなの?それとも。今日はたまたま?」
「しないよ。…わかんない。普通しないもんだと思ってた」
世論調査したわけじゃないので自信はない。けど、あんなの四六時中してたら胸の下に跡ついて消えなくなっちゃわないのか。こいつが今までしてきた女の子は。みんな夜寝るときつけてる派なの?
奴は飽かずわたしのむき出しの胸を目で愉しむみたいに嬉しそうに眺めた。
「こんな綺麗なら。隠したくなくなっちゃうよなぁ。…眞珂、思ってたより全然胸あるじゃん。服の上から想像すんのとはやっぱ違うな。いつも緩い服ばっか着てるからだろ。こんなスタイルいいんだったら。もっとぴっちり身体のラインの出る服、着ればいいのに」
とそこまで呟いて軽く顔をしかめる。
「いややっぱ駄目。そしたら他の男の目にもこれが入っちゃうもんな。…お前の身体は。俺だけが見られればそれでいいんだから…」
なんか恋人じみたこと言った。
と思うと、素早く胸元に顔を寄せてその先端に口づける。軽く舌の先でちろ、と舐められ、不本意ながら変な声が出た。
「あっいやんっ、もお…っ」
「可愛い声。…なんか、たまんないな。お前って」
そう独りごちてから不意に本気を出してきた。乳首に吸いつき、舌で包むように愛撫してくる。もう片方の胸を片手で弄られてお腹の奥からじんわりと変な感覚が湧いてきた。
「ん…っ、なんか。…だめ」
「感じてるじゃん。お前、こういうことされるの。もしかしてまじで初めて?」
あんまり苛めないでよ。と懇願する思いで奴の顔を下から見上げる。火照った目許が潤んでくるのが自分でもわかった。
「…うん」
哉多の頬が上気して呼吸がますます荒くなる。
「処女なだけじゃなくて。お前、本当にまっさらなんだな。…なんも知らないんだ、この身体…」
それからいきなり下衣のウエストに手をかけ、下着と重ねて一気に足から抜いた。
「ほら、これで全部脱げた。生まれたままだな。どう、恥ずかしい?」
やっぱりからかうんだ。わたしが経験ないと思って馬鹿にしてるのかな。とちょっと悲しくなって手を振り解いて丸まろうとすると上から全体を覆うように抱きしめられた。
「ごめん、冗談。…もうふざけないから。こんなときに。からかわれたら嫌だよな。ちゃんと真面目にするよ」
謝られると拗ねたこっちが馬鹿みたいだ。丸まっていた手脚の力を抜き、顔を上げた。
「平気。…だよ」
そのままキスされ、それを抵抗せずに受ける。最初のときより優しい、宥めるようなキスだ。
だけどもちろんそれじゃ終わらなかった。
奴はわたしの唇を離さないまま、片手を這わせて脚の間に潜り込ませた。あ、そんなとこ。と思ったけど声が上げられない。ぎゅっと両脚を閉じようとしたけど間に合わなかった。深く指が入り込んできてそこを柔らかくなぞる。
「…、っ、んっ」
自分の唇がわななくように震えるのがわかる。奴はそっと口を離して至近距離でうっとりと囁いた。
「すごい。思ったよりちゃんと濡れてるな。…ここ、気持ちよくない?眞珂。ほら、…こうされると」
「あっもお、やぁんっ」
自分でもびっくりするほど甘い声が喉から漏れてしまった。
気持ちいいのかどうかよくわからない。だけど、なんていうか。…自分がおかしなことになっちゃいそう。
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