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抑えきれない喘ぎ混じりに抗議する。哉多は愉しんでるみたいな口調でわたしをからかうように答えた。
「文句言っても無駄でしょ。口で何て言ってもここは嬉しそうにひくひくしてるよ。全く、眞珂ってほんとに素直じゃないんだ。身体の方がずっと正直で、ろくに隠しごともできないんだよね。…指だけなら平気そうだな。気持ちよさそうに、奥まで飲み込んでるけど」
「あっはぁんっ、意地悪…ぅ」
奴の指がぐい、と押し込まれたのがわかったけど抵抗できない。別の指で同時にくいくい、と前を責められてたまらず甘い声を上げる。
「あぁ…、またへんな、気持ちになっちゃうぅ…。せっかく、落ち着いてたのに。なんとか、してぇ…」
「そんな、腰振られてねだられると。…こっちもやっぱ、つられて。変な気分になっちゃうよ」
いや自業自得だろ。お前がそもそも始めなきゃ。何だって完全に鎮火してたところにわざわざ火を点けたんだよ?
奴は渇いた声で囁きながらぐい、とわたしの両脚を開かせて、背後からぴたりと覆い被さってきた。
「今は興奮してるからわからないだろうけど。初めてだったのに何度も続けてやり過ぎると中、あとで炎症起こすといけないからな。…外で擦るだけにしてあげる。ぴったりきつく閉じといてね、脚」
「え。…何?」
わけがわからず喘ぎながら訊き返すと、後ろから脚の間にぐっ、と熱くて硬いものが押し込まれてきた。
わたしの腿を両側から手で押さえて閉じさせ、激しく後ろから腰をぶつけるように擦り上げられる。…あ、ぁ。なんか、変なところに。…すごい、当たって。
「ふぁ。…あ、ぁん…っ」
容赦なく強くそこを擦られて、何とも言えない悦びが湧き上がる。熱い液がじわっとそこから溢れ出し、わたしと哉多の下半身をぐっしょりと濡らした。
「…どお?…これ。気持ち、いい?」
熱く弾んだ声で耳許で囁かれ、たまらず泣くような声を上げた。
「あぁっ、いい、いいのぉ…」
夢中で自らそれに擦りつけるように腰を動かすと、奴がわななくようにぴったり背中にくっつけた身を震わせ、「うっ」と短く呻くのがわかった。
「ごめ。…あ、っ。…眞珂…」
哉多が甘い声でわたしの名前を呼ぶと、すぐに脚の間で熱くどろりとしたものが溢れ出したのがわかった。
こんな風に、中でしないやり方もあるんだ。
本当にこいつ、絶対経験豊富で慣れてる。この歳でどれだけ女の子と遊んできたんだろ。と内心呆れつつも、わたしもその女の子たちと同じ。こいつの経験値の養分になるんだな。まあそれも、後腐れがなくていいのかもしれない。
と快楽の余韻で霞みかける頭で漠然と考えながら、ぐったりと背中にもたれてくる他人の身体の重さと温かみを味わっていた。
次の日の朝のキッチン。
朝からハイテンションで足にまとわりつくノマドを踏まないよう気をつけながらぼんやりする頭に何とか気合いを入れて、既に起きて忙しく動き回っている澤野さんに挨拶して中に足を踏み入れる。何とか寝坊はしなくて済んだけど。
やっぱりいつもよりだいぶ遅くに寝入ったし、当然頭はすっきりしない。
今日は呉羽さんが泊まってるから朝食の準備がある。柘彦さんはまず一緒に起きてはこないけど、彼女の分はちゃんと決まった時間までにダイニングで摂れるよう間に合わせないとな。と考えながら澤野さんと他愛ない会話を交わしつつぼうっと朝のコーヒーを飲んでいた。
結局、哉多とやっちゃったんだな。昨夜、わたし。
ほんの昨日の夜までは、そんなことになるかもしれないとも。本気で想像したこともなかった。また変なちょっかい出してきたらノータイムで撃退するだけ、だけどそれもいい加減面倒だなぁ。と頭の端でうんざり考えてるだけだったのに。
どうしてこうなったのか。自分自身でもよくはわからない。
「眞珂ちゃん。卵食べる?目玉焼きとスクランブルエッグ、どっちがいい?」
「あ。わたし、やります」
慌てて立ち上がろうとすると澤野さんが笑って手で押し留める素振りをした。
「いいから。眞珂ちゃんはも少しのんびりしてて。奥さまが起きて来られたら手伝ってもらうから…。わたしも今から食べようと思ってたところなの。だからついでよ、気にしないで」
「はい。じゃあ、コーヒー足しますね」
あたふたとコーヒーマシンに置かれたポットに手を伸ばす。そっか、澤野さんは朝食まだだったんだ。わたしはやっぱりぼんやりというか。何かと気が回らないのは本当にコンプレックスだ。
「ロールパンにしますか。それともクロワッサン?」
「あ、眞珂ちゃんの分のついでならじゃあ、お願い。クロワッサンにしようかな?」
「一個ですよね、いつも」
そんなやり取りをしながら席を立ってオーブントースターの前に移動した。
こんな時でもお腹が空く。というか。
むしろ、昨日が昨日だったからこんなに空腹感があるのかも。はっきりと食欲を感じるのは久しぶりな気がする。このところいつも、お腹は空いても食欲がない。空っぽの胃に無理やり食べ物を押し込むような食事が続いていた。
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