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佑香を大学に迎えに行き、世良さんと美香との待ち合わせのレストランカフェに早めに行く。ここなら、残念ながらこのまま解散となっても気まずくないだろう。いきなり食事なんて美香には無理かもしれない。世良さんが約束5分前に、そして美香は時間ちょうどに現れた。とりあえず、飲み物だけ注文し二人を紹介するが世良さんの緊張具合に悪いが笑いそうになる。
「世良さん、先日お会いした時のようにリラックスしてお話されては?」
「先日は何を話されたの?」
美香がモデルのオダミカのまま世良さんと俺を見る。
「世良さんがどれだけオダミカのファンかってことですよね?」
「はいっ…すみません、ちょっと落ち着きました…はい。本物だと舞い上がりましたが、今その血液が元に戻ってきました。改めて、今日はお会いできて嬉しいです…美香さんと呼んでもよろしいですか?」
「ええ、構わないけど…オダミカじゃないのかしら?」
「オダミカは画面の向こうのモデルですよ。いま隣にいるのは生身の人間、小田美香さんですから」
世良さんがそう言うと、美香が少し驚いた表情になる。
「一緒に写真を撮るとか、握手するとか…そうでなくて…」
「違いますよ」
モデル、オダミカの姿勢や顔が僅かに緩み、彼女はオレンジジュースを自分の前から避けると試すように世良さんに言った。
「本当はビールが飲みたかったの」
「奇遇です。私も…いえ、僕も喉がカラカラで珈琲よりビールが飲みたいと思っていたんです。注文しますね」
世良さんはにっこりしてから店員に手をあげ
「桐生さんたちは?」
と聞いてくる。俺たちはいらないと丁重に断ると、しばらくして二人は‘乾杯’とグラスを合わせたあと美味しそうに喉を鳴らした。
「お姉ちゃん、泡ついてる」
「ビールに泡はつきものよ」
「その通りです、美香さん」
「家のお姉ちゃんだ…ふふっ」
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