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episode 2
子供部屋のドアとはいえ木製だし、そこそこ重いはずなのだが。おかしいな私、か弱い女子高生のはずなんですけども? まあいいや。壊れたものは仕方がない。
もらい事故にならないよう、とっさに握っていたドアノブを離す。すると、ドアはそのまま廊下側へドカンと倒れ、その拍子にドアの金具がふっ飛んだ。
「あ、蝶番死んだ」
こんな日は、家のあちこちが壊れるが、そんなことには構っていられない。それよりなにより、気にかかることは他にある。私は倒れたドアを乗り越え(踏んだらメキッといったので、結果ドアも死んだと思う)そして廊下の先、リビングへと急いだ。
リビングに入ると……
ある。
やっぱりある。
ほらねテーブルの上を見て欲しい。
大きな大きなクマのヌイグルミが鎮座してるでしょ!
「あああぁぁ……またやってしまったぁ」
クマのそばにはサイフ。ガバッと飛びついて手に取り、中を確認する。
ない。
やっぱりない。空だ。 レシートはあるが金はない!
「もうまじでえぇ」
ヌイグルミを買ったんだろうから、その対価として、お金を支払うのは当たり前だとして。
問題は私にこのヌイグルミを買ったという覚えも、お金を支払ったという覚えもないということだ。夢遊病ですかこれ。こわっ。
小銭入れを見る。
「うそでしょ⁉︎ 1円も残ってないじゃん!」
私は空の財布を投げ捨てると、大きなクマのヌイグルミを両手でがしっと持って、ふるふると揺らした。
「ちょっとぉ! 私の大切な生活費返してよこのくっそクマやろうっ!」
揺らしてみても、クマはうんともすんとも言わない。ぽやんとしたとぼけ顔に向かって、笑いごとじゃないっつーの! と叫んでも、もちろん返事はない。
「もうヤダ……今日のごはん、どうすんのよう……金えぇぇ」
大きなため息をつくと、身体のそこらじゅうから、力がするすると抜けていった。そして私はその場に座り込んで、天を仰いだ。
神さま、と。
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