episode 4

1/1
前へ
/164ページ
次へ

episode 4

「ほんと、ごめんなさい」 今朝、動きすぎていた身体は通常運転、元に戻っている。それでも今朝の感じで色々と破壊してもいけないので、クマのヌイグルミをできるだけそっと、カウンターの上に置いた。 「あんまり返品って受け付けないんだけど……でも今回だけだよ?」 店員が渋々といったていで、レジからレシートに記載された商品代金と同等の現金を出してくる。私はそれを受け取ると、もう一度頭を下げた。 「本当にすみませんでした。助かりました」 自分で喜んで買ったにもかかわらず、返品し、助かりましたとは。 自分に呆れながらも、受け取った現金を財布に入れ、これで昼ごはんが買えると、ホッと胸を撫で下ろした。 「それじゃ」 そそくさと店を出ようとすると、「ちょっと待って!」と引き止められた。振り返ると、店員は頭をかきながら、近づいてくる。 「キミ確か、ルイちゃんだったよね?」 え、私がっつり個人情報までもらしてますね。確かに私は、勝田 瑠衣(かつた るい)ですが。 「ルイちゃんって今、彼氏募集中なんだよね? その話さあ、僕が立候補してもいい?」 は? もうあかーん。耳を疑う言葉。私、そんなことまで言っちゃってましたか? 「すみませんっ! なんか私、変なこと言ったみたいで……それ、冗談なんです。ごめんなさいっっ」 頭を下げると、店員は「ええー」と不服そうな声をあげた。 「なんかキミ、昨日と全然、雰囲気っていうか態度が違くない? 昨日はめちゃノリノリだったじゃん」 ああぁそれ私じゃないんです。いや、私なんですけど、違うんです。はい。 そう声を大にして言いたけれど、言えない。言っても信じてもらえない。 「ごめんなさいっっ。それじゃ失礼しますっっ」 私は店を出ると、学校へと向かう道へと走り出した。 (……病気かもしれない) 不安は募っていくばかりだった。
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加