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episode 4
「ほんと、ごめんなさい」
今朝、動きすぎていた身体は通常運転、元に戻っている。それでも今朝の感じで色々と破壊してもいけないので、クマのヌイグルミをできるだけそっと、カウンターの上に置いた。
「あんまり返品って受け付けないんだけど……でも今回だけだよ?」
店員が渋々といったていで、レジからレシートに記載された商品代金と同等の現金を出してくる。私はそれを受け取ると、もう一度頭を下げた。
「本当にすみませんでした。助かりました」
自分で喜んで買ったにもかかわらず、返品し、助かりましたとは。
自分に呆れながらも、受け取った現金を財布に入れ、これで昼ごはんが買えると、ホッと胸を撫で下ろした。
「それじゃ」
そそくさと店を出ようとすると、「ちょっと待って!」と引き止められた。振り返ると、店員は頭をかきながら、近づいてくる。
「キミ確か、ルイちゃんだったよね?」
え、私がっつり個人情報までもらしてますね。確かに私は、勝田 瑠衣ですが。
「ルイちゃんって今、彼氏募集中なんだよね? その話さあ、僕が立候補してもいい?」
は? もうあかーん。耳を疑う言葉。私、そんなことまで言っちゃってましたか?
「すみませんっ! なんか私、変なこと言ったみたいで……それ、冗談なんです。ごめんなさいっっ」
頭を下げると、店員は「ええー」と不服そうな声をあげた。
「なんかキミ、昨日と全然、雰囲気っていうか態度が違くない? 昨日はめちゃノリノリだったじゃん」
ああぁそれ私じゃないんです。いや、私なんですけど、違うんです。はい。
そう声を大にして言いたけれど、言えない。言っても信じてもらえない。
「ごめんなさいっっ。それじゃ失礼しますっっ」
私は店を出ると、学校へと向かう道へと走り出した。
(……病気かもしれない)
不安は募っていくばかりだった。
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