episode 6

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episode 6

「ははは、それがちょっと寝坊しちゃって」 嘘をつく。 「さっきまで校庭で座り込んでただろ? おまえのこと見つけて職員室から呼んだけど、気付かなかったな。体調でも悪いのか?」 「いえ、大丈夫です。全力で走ってきたから、それであんなんなってました」 竹澤先生はホッとした表情を浮かべると、それなら良いんだがなと小さく息を吐いた。 「まあ、全力で学校に来るのは拍手もんだが、夜更かしして寝坊すんなよ。あと、なんかあったらちゃんと相談しろよ」 そう言って優しく頭に手を置いた。 ドキッと心臓が鳴る。 先生はなんの気なしにこういうことをするのだけれど、先生が私の頭に手を置くたび、私はドキドキ、心の中では混乱混乱。 それでも本当に先生には助けられていて、ありがたやありがたやと拝みたい気持ちになる。 「ありがとうございます」 天涯孤独の身には沁みる優しさだ。私はいつも心からのお礼を言っていた。
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