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episode 7
「ねえ瑠衣。新しい先生が来るんだってえ。若いってさ。ねねね竹っちレベルだと良いと思わん?」
前の席の幸田エミが、によによと薄ら笑いをしている。
私の親友だ。エミりんは、頭脳明晰、頭の回転も速い。
私は物事を考えて結論を出すのも、瞬時に判断して決断するのも、とにかく遅いタイプ。正反対なふたり。
「イケメンがそうそういるわけがない」
「それな。うちのクラスの顔面偏差値な」
クールな同調に、あははと笑いながらぼんやりと外を見る。もうすぐ次の授業。日なたに包まれているこの窓際の席は、かっこうのお昼寝特等席。ぬるま湯のような風がそよっと入ってきて、とても気持ちがいい。
あーこの席に未練あり、席替えしたくないなあ、なんてぼけっと窓の外を眺めていたら。
教室のドアがガラッと勢いよく開いて、見知らぬ男がつかつかと入ってきた。先生っぽくない出で立ちだが、日誌を持っているところから、やはり先生なのだろう。
もしかしたら新任の先生ってこの人? という雰囲気が教室に漂ったけれど、誰かが声を一言あげる前に、男は言い放った。
「おい。そこのボケナスちょっと来い」
その言葉で教室がしんっと静まり返った。後ろを向いて談笑していた生徒も、身体を半分ひねりながら、様子を伺っている。
それにしてもボケナスってなに? ナスの種類か! 悪口だということはわかる、が。
「瑠衣、おまえのことを言ってるんだ」
いきなり名前呼び? は?
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