16960人が本棚に入れています
本棚に追加
・
加賀の発熱事件から一週間。あれから加賀は数日休んだけれど、もう完全に復活していた。
ちなみにあの日、私も寝落ちしてしまったわけだけど、早朝に加賀が起こしてくれたお陰で、何とか一旦アパートに戻りシャワーなど済ませて出社することが出来た。
加賀がいつから起きていたのかは分からないけれど、私が目覚めた時はまだ手を握っていた。寝顔を見られていたことに羞恥と焦りを覚えつつ、加賀の顔色が少し良くなっていたことに安心した。
加賀の部屋を出る前、簡単にうどんだけ作ってあげたけど。私は結局、あの部屋に何しに行ったんだろうってくらい何も役に立たなかった。
加賀にしたことと言えば、口移しと手を繋いだことくらい。改めて考えると、私って相当ヤバい奴。
加賀が久しぶりに出社してきた日は、それはそれは気まずかった。けれど、加賀はその日の事について「こないだはありがとう」の一言だけ私に伝えると、それ以上触れてくることはなかった。
だいぶ加賀の行動パターンが読めてきたというか、とにかくあの男は二人きりにならない限り恐ろしいほど普段通りらしい。
ありがたい反面、あれは何だったんだろうと混乱する。加賀ってほんと謎な男だと思う。
「安達、準備出来た?」
「うん、大丈夫」
そして今日、前回とは別のクライアントの引き継ぎで、加賀と日帰り出張する。
そう、車内で二人きりになるのだ。
もしかするとまた加賀に爆弾を落とされるかもしれない。そう思うと、朝からずっとそわそわして落ち着かなかった。
最初のコメントを投稿しよう!