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嫌味ったらしいというか、遠回しに加賀を攻撃しているように取れる言葉。けれど加賀は、やはり眉ひとつ動かさないから凄い。 「次の申告は安達がメインでしますが、私も隣でサポートするのでそこは安心していただければ」 「あー、それは全然心配してないので大丈夫ですよ。むしろ安達さんのことは信頼してますし」 「……」 「以前安達さんに操作方法を教えてもらった時、とても丁寧で分かりやすかった。口調も穏やかで話しやすいし、真面目に仕事に取り組んでいるのが見て取れる。だから、その時からずっと安達さんにお願いしたいと思っていたんですよね」 加賀の視線が、微かに鋭くなったのが分かった。どの言葉に反応したのかは分からないけれど、初めて加賀が表情を崩したことに、思わず動揺してしまう。 「もしかしたら質問等で連絡してしまうことがあるかもしれませんが、安達さん、その時はよろしくお願いしますね」 「は、はい。いつでもご連絡ください。って言っても、私は加賀ほど知識がないので、すぐにお答え出来ないこともあるかもしれませんが…」 「全然構いませんよ。僕の方こそ、質問攻めして困らせてしまったらごめんなさい」 「いえ、私は全然…」 「では松永さん、今日はこれで失礼しますね。お忙しい中ありがとうございました」 話を振られ、平静を保ちながら言葉を交わす。そうすれば、透かさず割って入ってきた加賀が、早々に立ち上がろうとするから、吃驚して思わず声が出そうになった。 「え、もう帰るんですか?」 それは松永さんも同じだったようで、元々大きな目をもっと見開いて首を傾げる。 「はい。あと1件寄るところもありますし、今日はとりあえず挨拶だけの予定でしたので」 「もう少しゆっくりしていけばいいのに。珈琲も淹れますよ?なんなら安達さんだけでも…」 「安達もまだ急ぎの仕事が残っているので」 「なるほど、それなら仕方ない」 「ではまた2月頃にこちらから連絡しますね。もし年末調整もこちらでされるようなら早めに教えてください」 つらつらと矢継ぎ早に言葉を紡いだ加賀は、横目で私を捉えると「行くぞ」と小さく声をかけてくる。 「はい」と慌てて頷き席を立てば、「まだ安達さんと話したかったなあ」と松永さんは残念そうに眉を下げながら笑った。
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