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「ごめん。勝手に嘘ついた」 二人きりになった瞬間そう零した加賀に「へ?」と間抜けな声を返す。 「急ぎの仕事があるって。このあと俺の用しかないから、安達だけここにいた方が時間は潰せたかもしれないのに」 「あ、そういうこと。いやでも途中で予定が変わるとバタバタするし、加賀も行動し難くなると思うから断ってくれて良かったよ。ありがとね」 私の言葉に、一瞬ほっとした表情を見せた加賀。やっぱり珍しく感情を表に出す加賀に、思わずきょとんとしてしまう。 余裕がないというか、なんというか。とにかく、あまり加賀らしくない。 「見て分かったと思うけど、俺とあの人はまじで合わない。だから先生の言う通り、担当は代わってよかったと思う」 「そうだね…何となく、合わないんだろうなっていうのは伝わってきた」 「俺からの電話は無視してたけど、多分安達ならすぐに連絡もつくだろうし、あの感じなら資料も催促すりゃすぐ送ってくれると思う」 「うん、そうだといいな」 「…でもやっぱ、他の人にして欲しかった」 加賀がポロッと零した言葉に、思わず「どうして?」と反応すれば、加賀は私を一瞥してから、小さく溜息をついた。 「あの人がただの女好きならまだ良かった」 「……?」 「絶対お前狙いだろ」 「えっ」 「こんな事なら無理にでも他の人に頼めばよかった。まぁこれは俺の個人的な感情だから、とりあえずはこのままでいくけど…」 少し苛立ちを孕んだ目に、思わずドキッとしてしまう。まるで嫉妬してるみたいな発言に、顔が熱くなる。 加賀が表情を崩した理由がもしそれだったのなら…なんて、都合のいいように考えてしまう私は、かなりめでたい女だと思う。 「少しでも変なことがあったらすぐ言って。担当代えてもらえるように俺からも先生に頼むから」 「…分かった」 ニヤけてしまいそうになる口元を慌てて手で隠した。それくらい私は、加賀の言葉に浮かれていた。
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