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その後加賀のクライアントのところへ寄り、帰る頃には16時を回っていた。
松永さんのところを出た時から、ずっと雪が降り続いている。最初は「初雪だ」とテンションが上がったけれど、よく考えればこの社用車はノーマルタイヤなわけで。
寒波の影響でかなり冷え込んできたし、日が沈んだら積雪や道路が凍結する恐れだってある。加賀はしれっとした顔で車を発進させたけど、私は気が気でなかった。
───そして、恐れていたことは起きてしまった。
高速道路の入口、本来ならスムーズに通過できるはずなのに、立っていた警備員に車を止められ、嫌な予感がした。
そこでふと目に入った電光掲示板。そこには“タイヤ確認中”の文字。嫌な予感は、確信へと変わった。
どうやら積雪の関係でタイヤ規制をしているらしい。この辺はちらちらとしか降っていないけれど、高速道路は山間部を通るため、冬用タイヤでないと通行出来ないと言われてしまった。
「うそでしょ…」
下道なら通行出来るけれど、会社までかなり時間がかかってしまう。
だからといって車中泊なんていう選択肢はないはずだから、下道で地道に帰るか、それとも近くのビシネスホテルに泊まるかの二択になりそうだ。
「…加賀、どうする?」
恐る恐る尋ねた私を一瞥した加賀は、こんな時でも落ち着いていて。
「ホテル行くか」
加賀はさらっとそう言うと、駅方面に向けて車を走らせた。
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