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加賀がホテルのすぐそばにあるコンビニにお弁当を買いに行ってくれている間にシャワーを浴びて、その後部屋で一緒にそのお弁当を食べた。
最初はガチガチに緊張していた私だけど、静かにテレビを見ながら肉類ばかりを頬張っている加賀を見ていたら、次第に緊張もほぐれていった。
その間も加賀には何度か仕事の電話がかかってきて、仕事モードがずっと続いていて。
変に身構えていた自分が、何だか恥ずかしくなった。
「雪、明日には止むかな」
「さっき天気予報見たらもうすぐ止むようになってた。明日は普通に帰れると思う」
淡々と答えた加賀は、一人がけのソファに座ってスマホを弄っている。それだけで絵になるから、つい見入ってしまう。
「安達」
「え、あ、はい」
不意に声を掛けられ、大きく肩が揺れた。スマホに向けられていた視線が私に移り、その上目がちの目がやけに色っぽいから、思わずぞくっとした。
「俺シャワー浴びてくるから、先に寝てていいよ」
けれど、彼が紡いだのは意外にもそんな言葉で。加賀はソファから立ち上がり思い切り伸びをすると、気怠そうに背中を向け、そのままバスルームに行ってしまった。
さっき“一緒に寝ていい?”なんて聞いてきたくらいだから、もっといつもみたいに爆弾攻撃を受けると思ってた。
けれど、どうやら意識していたのは私だけだったらしい。
別に何か起きることを期待していたわけじゃないけど。
拍子抜けしてしまって、暫くそこから動けないでいた。
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