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「それしても、普通水とお酒を間違う?苦手なら尚更匂いで分かりそうなのに」
「ですよね…」
ナナちゃんの仰る通りです。普段の私なら、少し飲んだだけですぐに気付いていたと思う。でもそれくらい、昨日はぼーっとしていたというか、魂が抜けていたというか。
しかも加賀のビールにまで手を伸ばすなんて、どれだけお酒に頼ろうとしてたんだろ。かっこ悪いところ見せちゃったな。反省しなきゃ。
「まぁでも、それくらいストレス溜まってたのよね?仕方ないよ、6年も付き合ってた男に裏切られたんだもん。そんな時くらいハメ外してもいいじゃない」
ナナちゃんの言葉に、思わず泣きそうになる。持つべきものは友だと、改めて思った。
「元気そうなんて言ってごめんね。本当はかなり落ち込んでたんだよね」
「うぅ…ナナちゃんが優しい…」
「何言ってんの?私はいつも優しいでしょ」
ナナちゃんの優しさが沁みる。
振られたけど、案外平気だと思っていたのは嘘じゃない。でもこうして優しい言葉をかけられると、やっぱり響くものがある。
喧嘩別れならまだしも、他に相手が出来たと言われる事が、こんなにもしんどいものだとは思わなかった。だって、お前はその人以下なんだよって言われてるようなものだから。
でも…何もかもよく分からないまま振られるよりは、キッパリ諦められていいのかも。振られたことは悲しいけれど、時間が経って冷静になった今でも、彰に縋りたいという気持ちは1ミリもない。
「何かあったら言ってよ?いつでも相談乗るからね」
「ありがとうナナちゃん」
ナナちゃんがそう言ってくれるだけで心強いよ。何だって乗り越えられそうな気がする。
けど、ごめんナナちゃん。実は今、他の悩みがあるのだけれど、さすがにそれは言えない。
実は彰のことじゃなくて、加賀のことで頭がいっぱいなんて、言えるわけないよ。
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