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「依茉ちゃん!昨日あれから大丈夫だった?!体調悪くない!?」
入口付近でナナちゃんと微笑み合っていれば、不意に後ろから勢いよく声を掛けられ、弾かれたように振り返った。
そこで視界に入ったのは、心配そうに此方に近付いてくる井上さん。と、その後ろにあの男もいて、思わず息を飲んだ。
「だ、だだ大丈夫でした。ご心配お掛けしました。そしてご馳走様でした」
「いえいえ。それより、顔真っ赤にして帰っていったからずっと心配で。まぁ加賀が一緒なら安心だろうとは思ったけど、二日酔いになってないかなって」
「へ、平気です!この通りピンピンしてます!」
「そう?ならよかった」
本当はまだ少し頭が痛いけど。この頭痛は、もしかしたら精神的なものかもしれないし。
でも今朝、インスタントのお味噌汁を飲んだら少し楽になりました。なんて、加賀の前で言う勇気はなかった。
どうしよう。加賀の顔見たら、一気に心拍数が上がった。動悸がしてしんどい。
でも当の本人は、しれっとした顔で私達のやり取りを見てる。それがまた緊張するんですけど。
「昨日も言ったけど、合コンならいつでもセッティングするから任せてね!」
「とか言って、どーせ井上さんが女の子と飲みたいだけでしょ」
いつもの様に、ナナちゃんと井上さんが言い合っているのを苦笑しながら見ていたら、加賀が静かに私の隣に並ぶから、息が止まった。
顔が熱い。怖くて加賀の顔が見れない。
でも、部屋まで送ってくれた加賀に、まだお礼を伝えられていない。
「か、加賀…?」
心臓がバクバクと音を立てている中、意を決して声を掛ければ、彼の双眸がゆっくりと私を捉えた。
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