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番外編 バレンタイン
あと数日でバレンタインだ。思えば、奏人と過ごす初めてのバレンタイン。
奏人ってお肉料理が好きなイメージだけど、チョコをあげても喜ぶのだろうか。甘いものじゃなくて、普通にお肉をあげた方がいいのかな。それとも、食べ物じゃなくて物のほうがいい?
…どうしよう。ここ最近SNSやネットで調べているけれど、全く決まらない。クリスマスの時もそうだったけど、私はプレゼントを選ぶのがかなり苦手のようだ。
遠回しに聞いてみる?それとも、井上さんにお願いして探りを入れてみようか。
……いや、奏人に隠し事は通用しない。それで何度も拗れたじゃないか。となると、やっぱり…
「…依茉?」
「ひゃっ!」
心臓が止まるかと思った。
すぐ後ろで寝息を立てていたはずの奏人の声が、突如鼓膜を揺らしたからだ。
「…まだ起きてんの?」
「え、や…うん、ちょっと…」
「どうした?何かあった?」
私を後ろから抱きしめる彼は、まだ眠そうな声をしている。それもそのはずだ。今の時刻は夜中の2時半。
繁忙期である2月。今日も遅くまで残業していたし、奏人の身体にはかなり疲れが溜まっていると思う。
「ごめんね、起こした?」
私の問いかけに、奏人は「ううん」と放つと、私の髪に優しくキスを落とした。
…多分、少し寝ぼけてる。
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