02

10/31
前へ
/345ページ
次へ
「昨日の夜」 「…昨日の、よる?」 「お前の部屋で」 「わ、私の部屋……?」 加賀さんそれは、今ここであの夢を語れと? …いや無理だ。昨夜の夢がフラッシュバックするけれど、どれもここで口に出来るようなものではない。 記憶が曖昧でありながらも、思い出すのは加賀と濃厚に絡み合ったことと、あとはなんだっけ。愛してくれるとか、遠慮しない…とか??? む、無理でしょ。絶対言えない。もし違ったら、恥ずかしいだけじゃ済まないし。ホントだとしても、どう反応すればいいか分かんないし。いや、ホントな訳ないんだけど。 「ゆ、夢と現実がごちゃごちゃで…」 「……」 「どこからどこまでが現実なのか…」 バクバクと煩く鳴り響く心臓を押さえ、何とか平静を装いながら、誤魔化すように言葉を並べる。 すると加賀は「ふうん」と一言零すと、再びくるりと踵を返し、私に背を向けた。 「安達」 「は、はい」 背中を見せたまま、ぽつりと私の名前を呼ぶ加賀。 昨夜の加賀は私のことを「依茉」と呼んだけど、今日は安達呼びに戻ってる。それに安心するような、ちょっと寂しいような気持ちに浸っていれば、 「多分、全部現実だと思うけど」 「……え、」 加賀は不意打ちで大きな爆弾を投下したかと思うと、そのまま自席の方へ行ってしまった。 待って、待って待って待って。 キスもエッチもあの数々の台詞も、全部現実なんだとしたら…キャパオーバーなんですけど?! ていうか私の頭の中覗かれてる?!加賀ってエスパー?! 「…帰りたい」 あぁ、こんなんで今日一日仕事をこなせるのだろうか。
/345ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16822人が本棚に入れています
本棚に追加