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「昨日の夜」
「…昨日の、よる?」
「お前の部屋で」
「わ、私の部屋……?」
加賀さんそれは、今ここであの夢を語れと?
…いや無理だ。昨夜の夢がフラッシュバックするけれど、どれもここで口に出来るようなものではない。
記憶が曖昧でありながらも、思い出すのは加賀と濃厚に絡み合ったことと、あとはなんだっけ。愛してくれるとか、遠慮しない…とか???
む、無理でしょ。絶対言えない。もし違ったら、恥ずかしいだけじゃ済まないし。ホントだとしても、どう反応すればいいか分かんないし。いや、ホントな訳ないんだけど。
「ゆ、夢と現実がごちゃごちゃで…」
「……」
「どこからどこまでが現実なのか…」
バクバクと煩く鳴り響く心臓を押さえ、何とか平静を装いながら、誤魔化すように言葉を並べる。
すると加賀は「ふうん」と一言零すと、再びくるりと踵を返し、私に背を向けた。
「安達」
「は、はい」
背中を見せたまま、ぽつりと私の名前を呼ぶ加賀。
昨夜の加賀は私のことを「依茉」と呼んだけど、今日は安達呼びに戻ってる。それに安心するような、ちょっと寂しいような気持ちに浸っていれば、
「多分、全部現実だと思うけど」
「……え、」
加賀は不意打ちで大きな爆弾を投下したかと思うと、そのまま自席の方へ行ってしまった。
待って、待って待って待って。
キスもエッチもあの数々の台詞も、全部現実なんだとしたら…キャパオーバーなんですけど?!
ていうか私の頭の中覗かれてる?!加賀ってエスパー?!
「…帰りたい」
あぁ、こんなんで今日一日仕事をこなせるのだろうか。
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