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「…あれ、また違う」
今日は驚くほど電卓を打ち間違える。完全に脳が死んでる。
それもそのはずだ。朝から加賀にあんな爆弾を落とされたら、仕事どころではない。
確かに昨日のことを聞き出したいとは思った。けれど、まさか加賀の方からあんな質問をしてくると思わなかったから、思わず言葉に詰まってしまった。
結局昨夜なにがあったのか分からないままだし、もし本当にあの夢が全て現実なのだとしたら、加賀は私に何を伝えたかったんだろ。
台詞も所々しか覚えてないけれど、何となく、まだ私に未練がありそうな雰囲気を醸し出してた。
…加賀が、まだ私を?
いや、ないでしょ。だって10年前に振ったのは加賀の方だし、再会してからもそんな素振りはひとつも見せなかったし。
でも、もう遠慮しなくていいみたいなこと言ってたよね。てことは、私が彰と別れるのを待ってた?
…そんな訳ない。てか、そんなに私に拘らなくたって、加賀はモテる。女なんて選び放題だと思うし。
てことは、やっぱ傷付いた私を慰めてくれただけなのかな。
私があまりにも惨めで、見てられなかったのかな。
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