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加賀ってこんなサラッと笑う人だったっけ?と、不意打ちの笑顔に心臓が跳ねる。ただでさえ今日は加賀のことを意識しまくっているのに、こんなの反則だ。 視線を逸らすことも出来ずに固まっていれば、突然加賀が腰を折り距離をぐっと縮める。それにまた驚いて、息が止まるかと思った。 何をするのかと思いきや、加賀は私の手からするりとボールペンを引き抜くと、そこにあったメモ帳に、さっきつらつらと並べた用件を書き始める。 「こんだけお願い」 「…了解、しました」 男の人にしては読みやすい字で書かれた内容を、働かない頭でなんとかインプットしていれば、 「…あと、夕方時間空いてる?」 「え?!」 最後に付け加えられた言葉に、大袈裟に反応してしまった。 「何も、予定はないけど…」 特に急ぎの仕事もないし、クライアントのところへ行く予定もない。デスクに置いてある卓上カレンダーを確認しながら答えれば、加賀は「じゃあ空けておいて」と小さく放った。 な、なんだこのお誘いは。仕事?仕事の用事だよね? でもなんの用件も伝えずに空けておいてって、まるでデートのお誘いみたい……って、私は何を考えとんじゃ!
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