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「まぁ依茉ってしっかりしてるから、振られたからって病んだりするタイプではないか。相手もどうせ“お前はひとりでも生きていけそうだから”とか言ってきたんでしょ」
「なんで分かんの」
「ほんとに言われたのね」
そうだよ。言われたよ。なんならその台詞、今まで色んな人に言われてきたよ。だって幼い頃から母親に“ひとりでも生きていけるような女になりなさい”と言われ続けてきたんだもん。
なんでそう言われてきたかというと、答えはとてもシンプルで、母親がバツイチだから。私が小学2年生の頃、父親の浮気で離婚した。
女手一つで私を育てた彼女の後ろ姿を見て育ったら、そりゃ私もこうなるよ。いつも忙しそうな母親に迷惑かけないようしっかりしなきゃって常に思っていたし、皆に頼られる存在になれるよう努力してきたし。
だからなのか、部活では中学高校どちらもキャプテンだった。学級委員長にも推薦されたことがある。
だから今回のこともショックはショックだけど、こんなことで挫けるほどメンタルは弱くない。
…だけど過去に、1度だけ失恋でボロボロになったことがある。初めての彼氏で、初めて本気で好きになって、自分なりに一生懸命尽くしたのにあっさりと捨てられてしまった、苦い思い出。
…やば。その時のこと思い出して、ちょっとしんどくなってきたかも。
「あ、あの二人やっと来た」
ナナちゃんにそう声をかけられハッと我に返った私は、慌ててお店の入口に視線を移す。そこには会社の先輩であり、この辺ではチャラ男で有名な井上さんと、その後ろを気怠げについて歩く男、同僚の加賀の姿があった。
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