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「別に他の人に回しても…」 「だ、大丈夫。夕方までにシャキッとさせるから」 嬉しい。また担当が増える。こうして任せてもらえるって事は、少しずつ認めてもらえてるってことで、皆の仕事を手伝うのも勉強になっていいけど、やっぱり自分の担当が増えるのは素直に嬉しい。 そうだ、彼氏に振られたからって落ち込んでる場合じゃない。加賀のこと意識して、ミスってる場合でもない。 とにかく今は仕事に集中しなくちゃ。 「加賀、ありがとう。私頑張るから、引き継ぎよろしくお願いします」 座ったまま身体ごと加賀の方に向き直り、ぺこっと頭を下げる。と、加賀の手がぽんっと後頭部に触れた。 加賀が仕事中にこうして触れてくるのは珍しくて、思わずどきっと心臓が跳ねる。 「そんな張り切らなくてもちゃんとサポートするから。なるべくややこしくないとこ回すし」 「…うん、ありがとう」 「今日はとりあえず挨拶だけだから、それまでにシャキッとさせといて」 「は、はい。承知しました」 じゃあ、また声掛ける。と付け加えた加賀に「分かった」と返事をすれば、加賀はそのままオフィスから出て行ってしまった。 加賀に触れられたところが熱を帯びてる。昨日の事があったから余計にドキドキする。 けれど、今はそんなことを気にしてる暇なんてない。公私混同するなんて社会人としてあってはならないこと。加賀がいつも通り接してくれているのだから、私も普通にしてなきゃ。 加賀の字が並べられたメモ帳を手に取って「よし、頑張ろ」と心の中で呟くと、再びパソコンの画面に向き合った。
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