16748人が本棚に入れています
本棚に追加
/345ページ
きっと母が最終的に頼れる人は、私しかいない。だから私は母以上にしっかりしてなきゃいけない。
昔からそう自分に言い聞かせてきたけど…たまに、漠然とした不安に襲われることがある。
でもその不安の吐き出し方を、私は知らない。人に頼る方法が分からない。
夢の中で、加賀に“お前は弱音を吐かない”みたいかなことを言われた気がするけど、吐かないんじゃなくて、吐けないんだと思う。
でもそれを彰に見せられたら、もっと未来は変わっていたのかな。…いや、寧ろもっと早くに別れていたかも。
恋愛って難しい。母に似て、私には向いてないのかもしれない。
「依茉」
「わっ、ナナちゃん」
給湯室でマグカップを持ったままぼーっと突っ立っていた私に、ナナちゃんがひょこっと顔を出して声を掛ける。
「もうランチから帰ってきたの?」
「うん、コンビニで買ってきた」
ナナちゃんはそう言うと、手に持っていたビニール袋の中を漁りながら近付いてくる。
「体調どう?食欲ないってことは、やっぱ昨日のお酒が効いてるんでしょ」
「実は、ちょっと…」
「だからって何も食べないのは良くないよ。てことで、これでもどーぞ」
ナナちゃんは何やら袋から取り出すと、私に差し出してくる。
躊躇いながらも受け取ると、それは栄養ドリンクにウイダーinゼリーだった。
「ナナちゃんありがとう」
「いいえ。今日引き継ぎもあるんでしょ?倒れられたら困るからね」
「…加賀から聞いたの?」
「ううん、お父さんから。何か加賀君の方から依茉に回したいって言ってきたらしいよ」
「え?」
「多分本当は依茉に回さなくても自分でこなせるらしいんだけどさ、あれかな、彼氏と別れて落ち込んでる依茉に、少しでも元気になってもらいたかったのかな」
何だかサラッと凄いことを言われた気がする。
思わずぽかんとする私を余所に、ナナちゃんはビニール袋から自分用の栄養ドリンクを取り出すと、それを一気飲みした。
最初のコメントを投稿しよう!