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私本当に振られたのかなってくらい、彰のことを考える余裕がない。加賀のお陰と言うべきか、加賀のせいと言うべきか分からないけれど、ずっと加賀のことばかり考えてる。
あぁ、ダメだな。切り替えなきゃなのに。
「お、いい飲みっぷり」
これ以上ミスをするわけにはいかないし、とりあえずもう一度気合いを入れ直すため、ナナちゃんから貰ったドリンクを一気飲みすれば、それを見たナナちゃんが、嬉しそうに「男前~」と笑った。
「ナナちゃん。私仕事頑張るから」
「うん。それで元彼のことを忘れられるならいいと思う。でもあんまり張り切りすぎないようにね。肩の力抜いて、ストレス溜まったら飲みに行こう」
ナナちゃんはそう言って優しく目を細めると「じゃあ私は買ってきた物食べるから」と、踵を返し給湯室を出ていく。
その背中を追いかけるように、私もオフィスに戻った。
「これから行くとこは、去年エステサロンを開業した森西さん。とりあえず今日は、その一件だけな」
「了解。確かクラウドしてるとこだよね」
「うん。だから基本は向こうが入力するから、安達はたまに覗いてチェックして、分かんないことがあったら俺に言って。だいたい決まった仕訳しかないし、そんなに量もないから比較的簡単だと思うけど」
「うん、分かった」
クライアントに向かう車内で、加賀が喋った内容を助手席でメモを取る。
加賀の隣に乗ったのはこれが初めてではないけれど、ふたりきりの車内は少しドキドキする。けどそれよりも、これから森西さんに会う緊張の方が大きかった。
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