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「歳は30代後半…だったっけ」 「うん。ちょっとキツいというか、自己主張強めの人だから、やりづらい事もあるかもしれないけど。何かあったら俺も一緒に顔出すし」 「ありがとう…助かります」 お昼にナナちゃんからあんな話を聞いてしまったせいか、加賀の言葉ひとつひとつが胸に響く。 横目で加賀をちらっと確認すれば、やっぱり気怠そうにハンドルを握っているのに。そんな彼が私のために行動してくれているのかと思うと、無意識に口元が緩んでしまう。 加賀にきちんとお礼を言うべきなのかな。でもナナちゃんから話を聞いたこと、内緒にしておいた方がいいのかな。 「ていうか、運転までさせちゃってごめんね」 結局話を切り出すタイミングを逃し、当たり障りのない会話をすれば、加賀はちらっと此方を一瞥しただけで、そのまま無言で車を走らせる。 相変わらず綺麗な横顔だな、と見惚れていれば、ふいに昨夜の加賀を思い出して、一気に顔が熱くなった。 そういえば私、この人と夢の中で口移しした。あれが実は夢じゃなかったのなら…。何でこの人は、こんなにも普通でいられるのだろう。 やっぱ昨日の夜に何があったのか知りたいな。いやでも、ずっと加賀の言動にばかり目を向けているけれど、私も結構大胆な発言をした気がする。 名前で呼んだだけでなく、昔の話や彰のことまで…。もしそのことを追求されたら、それこそ困る。 やっぱ無理だ。自分からその話は出来ない。大人しく仕事に集中しよう。 ぶんぶんと首を横に振り、手元のメモ帳を見つめる。加賀に教えてもらった内容をインプットするため、そこに書かれている文字を何度も読み返す。 「なぁ安達」 すると先に沈黙を破ったのは、意外にも加賀だった。 「ん?」と視線を向ければ、加賀は前を向いたままゆっくりと口を開く。 「元彼って、どんな奴だった?」
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