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「確か、結構長かったよね?」
「まぁ、はい。6年付き合ってました」
「6年?!」
チャラ男で有名な井上さんにはかなり衝撃的だったのか、珍しくテンパっている彼は、注文をとりにきた店員さんに「あれ、何飲もうとしてたっけ」と、慌ててメニューを見返している。
そんな井上さんとは反対に、常に表情を崩さない隣の男は、店員さんに「生ひとつ」と伝えると、ポケットからスマホを取り出していじり始めた。
この人は元カノが彼氏に振られた話を、どんな気持ちで聞いているのだろう。まぁ、見た感じどうでもよさそうというか、全く興味がないのが見て取れるけど。
「初めての彼氏だったわけじゃないよね?」
「えっ…」
無事に注文し終えた井上さんは、箸をサラダに伸ばしながら尋ねてくる。
何気なく放たれた言葉だけれど、私的にあまり突っ込まれたくない内容だったため、思わず顔が引き攣った。
「初めて…ではないですね」
井上さんとナナちゃんは、私と加賀が同級生であることは知っているけれど、昔付き合っていたことは知らない。
なんならこの職場で加賀と再会してから一度もその話題に触れたことがないため、彼が私と付き合っていたことを覚えているのかも分からない。もしかすると、私は元カノとしてカウントされていない可能性だってある。
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