05

21/30
10854人が本棚に入れています
本棚に追加
/213ページ
緊張で声が震えたけど、背中を向けた今なら聞ける気がした。 私の髪に触れていた加賀の指が離れていく。加賀は今、どんな表情をしているのだろう。 振り返るのが怖くて確認することは出来ないけど、私が起きていたことに驚いているのか、それとも返事に困っているのか、加賀はなかなか口を開かない。沈黙がやけに長く感じて、思わず逃げ出したくなる。 鳴り止まない心臓を押さえながらゆっくりと呼吸を繰り返し気持ちを落ち着かせていれば、 「逆に聞くけど、安達は何を覚えてんの?」 やっと返ってきたのは、そんな言葉だった。 「…えっ…と、」 質問に質問で返され、思わず言葉に詰まる。 どこまで狡い男なんだろう。こっちは夢と現実がごちゃごちゃなのに、一体どこからどこまで話せばいいの。 「……もし違ってたら、馬鹿じゃねーのって笑ってくれたらいいんだけど」 「……」 「勘違い野郎って、罵ってくれてもいいし」 「いいから早く言って」 緊張し過ぎて吐きそう。一生懸命記憶を辿るけど、内容的に、自分で口にするのはかなりキツい。 でも加賀が急かしてくるから、仕方なく「あのね、記憶が曖昧だし、話せば長くなるんだけど」と前置きをすれば、加賀は「うん」と落ち着いた声で相槌をうった。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!