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「…ねぇ奏人」
意を決して声をかければ、奏人は「うん?」と掠れた声を零す。
奏人が寝ぼけている今なら、何でも聞ける気がした。
「…奏人は、バレンタインに何が欲しい?」
いつも奏人に隠れてコソコソしていた結果、彼を傷付けていた。だから今回こそ奏人に心から喜んでほしかった。
きっと私にサプライズは向いていない。それならば奏人が本当に欲しい物を…
「依茉」
「…え?」
「依茉が欲しい」
「え!?」
奏人の言葉に、夜中ということも忘れて大きな声が出てしまった。慌てて口に手を当てていれば、奏人は私のお腹に回している手に力を込める。
わ、私が欲しいって、それはどういう意味だろう。もしかして、身体を重ねたいとか…?
「依茉と結婚したい」
「…へ?」
「依茉以外何もいらない」
んな、何なのその甘い台詞は。これはもはやプロポーズなのでは…?
いや、いやいや。元々結婚前提に付き合っているし、こんなタイミングでプロポーズをしてくるような人じゃないことくらい、私が1番よくわかってる。
けど、やっぱり好きな人から“結婚”の言葉を聞くと、ドキドキせずにはいられない。
それに結婚したいと思っているのは、私も同じだから。
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