雪の日の思い出

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冷たく重い粒が容赦なく窓に打ち付けられる。 白い塊が混ざったそれは、雪のように軽く舞う訳でもなく、雨のように静かに濡らすわけでもなく、雹のように愉快に叩くわけでもない。 どんよりとした粒は薄っぺらい窓ガラスに当たっては融けて消える。 さながら、子どもと一緒に時を過ごす夢を見ていた母親のごとく、儚く、脆く、消えていく。 「……」 部屋に重い沈黙が下りる。 こんな雪じゃ、外に出ることもままならない。 ソファの上で丸まって、視界を閉じる。 何もしたくない。何もしたくない。何も……。 「……」 ラジオの音が混ざる。誰かが流しているラジオだ。 平均的、アベレージ、ごく普通、そんな生活音が混ざる。 いつも置いてけぼりで、取り残されてしまう。 低気圧で何も考えられない。 とりあえず、何か温かいものでも飲もう。 そう思って立ち上がったけど、何も思いつかなかった。 薬缶に水を入れて、適当にお湯を沸かす。 もうこれでいいや。なんか面倒だし。
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