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堂道はわざとらしい咳払いを一つして、絵にかいたように仕切り直す。
「今回は、俺の脇の甘さ故でもあったから、お前の暴走を咎めることはしねえけど、次こんなことやったら許さねえからな」
「はいっ」
ソファに座る堂道に睨まれて、立ったままだった糸は気を付けの姿勢をさらに正した。
そして、「糸」と自分のところへ呼び寄せ、糸は糸で、借りて来た猫のようにおずおずと近づく。
届く場所まで行くと、その手を握られた。
「お前に守られねえでもな、ピンチの時の足掻き方ってのは、みっともねえぐれぇに俺はもう知ってんだよ。だから心配しなくていい」
「はい……」
「お前が身体まで張って俺を守ろうとしてくれたのは嬉しい。ただ、そのために俺と別れるって本末転倒だけどな。そこの部分の俺の幸せは無視なのかよ」
泣きそうになっていた糸の涙が一瞬引っ込む。
数秒、考えて、
「そこは……確かに、なぜか忘れてましたね」
堂道が「そこが一番重要なんすけど?」と笑った。
本当に失念していたし、目の前の困難から守る方法しか考えていなかった糸は確かに馬鹿だ。
しかし、池手内のことを自分で解決できたら、また全力で堂道を取り返しに行くつもりだった。
「まぁ、もういいよ」
堂道は糸の腰を抱き寄せて、服の上から、透ける自慢のEカップに唇を押し当てて、言った。
「エロいから、許す」
「あ……」
「これ、エロすぎんだろ……」
糸はもうたまらなくなって、堂道の完璧にセットされた髪をぐしゃぐしゃに掻き回す。
それが始まりの合図になった。
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