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立ったままのちょうど胸の位置に堂道の頭がある。
背の高い堂道を見下ろすことは、これまであまりなかったことに気づく。そのアングルに、わずかな征服欲が生まれた。
その一方で、そこに母性的な感情もあった。
大きなコワイ男がまるで縋りついてくる子どものようだ。
一瞬だけ、堂道との関係に糸が優位に立てた気がして、その手近な髪の毛をぐしゃぐしゃに掻きむしったが、堂道は抵抗しなかった。
堂道の一番手が届きやすい場所には、糸の下半身があった。
スカートの裾から上へ上へと這い上ってきて、いつもはおざなりなストッキングを下ろすことも、それを脱がすことも、下着をずらすのも、今日の前戯のメインディッシュだ。
キスも遠いから、できない。
糸の口は小さな喘ぎを漏らすだけで、堂道の口は糸の胸のふくらみに押し付けられ、その合間に「糸」と何度か呼んだ。
堂道は、下着と、さらに服の上から糸の胸の先を何度か食むように刺激する。
「ああ……」
堂道の指が、糸の直接触れるようになると、糸の身体がぐらりと揺らいだ。
「立ってるの、つらいな」
とろけた思考で頷いた糸を解放し、
「ベッド、行っとけ」
そう言って、堂道も立ち上がる。
ネクタイを引き抜き、シャツを脱ぎはじめた。
髪が鬱陶しいのか顔を左右に振って払おうとする仕草が、大きな犬のようだった。
そこからは、もうよく覚えていない。
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