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「うおっ、やべぇ、一瞬寝てた……」
堂道の身体がびくっと跳ねて、糸もまどろみから目を覚ます。
「……糸ぉー? 大丈夫かー」
堂道の手が糸の頭を撫でるも、そこにもはや細やかな力加減はない。
乱暴ともとれるおざなりな撫で方だ。
「糸ちゃーん?」
堂道も、糸を抱きしめる体力も残っていないのか、二人ともベッドにぶっ倒れていると言うにふさわしい、果てたそのままで動けなくなっていた。
「おいおい……、明日、っつかもう今日か。仕事だぞ。どうすんだよ……」
糸は返事もできない。
「つーか、俺……マジすげえわ。俺、四十代男性の希望の星だワ。精力剤なしでこの体力。誰かに自慢しよ」
糸は笑ったが、それは声にも表情にもならなかった。
「糸、お前なんかいイッたよ?」
そんなこと覚えてもいないが、男の一回につき、糸はその三倍は数えてもいいはずだ。
まだ次のラウンドがあるなら、それは少し恐い。理性がどうにかなってしまうかもしれない。
もっとも、堂道が携帯していたゴムが二つ、ホテルのアメニティーとしての二つがもうないので、次は冷蔵庫の隣の扉の中に隠れている大人のおもちゃの自販機で買わないといけないらしい。
「お前、久しぶりって言うけど、よく考えたら、全然ご無沙汰じゃなくね? 一週間も空いてなくねえか? あ、一週間は空いてるか。いやそれでも……」
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