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セックスは、どんどん羞恥心と遠慮がなくなっていき、最後はただ欲のままに、抱き合った。
「体、気持ち悪ぃ、けど、もう、無理だな……」
最初から今まで、一度もシャワーもせず、二人とも今や汗と体液にまみれている。
ようやく堂道はごろんと体の向きを変え、そんな状態の身体で、同じ状態の糸の身体を抱きしめた。
物語的に美しくないが、本能的で、エロくはある。
しかし、この部屋と照明のなかにあっては、これもふさわしい姿だと糸は思う。
そのためだけの場所なのだから。
「糸……」
返事はできなかったが、どうにか自身を包む身体に交差させるように腕をまわす。
さすがに、もう今日はこれで終わりか。
満ち足りたような、足りないような、ホッとしたような、切ないような。
「糸」
「はい」と頭の中では返事しているのに、現実がどんどん離れていく。
「糸、愛してるからな」
「わたしも」
そう言ったつもりが、それはきっと言葉になっていないだろう。それでも抱く腕には力を込めたつもりだ。伝わっていなくても伝わっているはずだし、それ以上に、堂道はもうそのことを知っている。
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