1.堂道、再び!

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1.堂道、再び!

「玉響さん、玉響さん!」  羽切が小走りにやって来たのは、始業してすぐのことだった。  すっかり面々の変わってしまった営業部は、羽切にとって感慨深き古巣ではないらしい。特に辺りを懐かしむ様子もなく、糸のデスクへ一目散にやってくる。  一年半前、羽切は経営企画室に異動になり、そして昨秋に昇進した。異例のスピード出世で、いまや花の経営企画室長様だ。  営業部員も多くがその部署に憧れる。  自信の表れか、最近の羽切は、なんというか『輝き』が増して眩しく、つい目を細めたくなるほどだ。   「羽切室長、直々にどうされました?」 「速報! 速報!」  破顔した羽切は、かつて直属の上司だった頃を思わせる人懐っこい笑顔で言う。 「えっ、まさか!」  糸は思わず大きな声になり、現一課の課長である飯田に睨まれた。  しかし、羽切の一課時代の部下でもあるので、糸の隣に羽切を認めた瞬間、きまずい会釈にかわった。 「まだ秘密なんだけど」  しー、っと身を小さくして人差し指を立てる羽切に、糸もつられて声は小さく、しかし目はこれ以上なく輝かせて言った。 「ついに!?」 「うん! 玉響さん!」 「わ、私、今日、午後から半休取りますっ!」  これは、部下に手を出すパワハラ上司のその後の話である。  
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