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本来ならば、今日はユウを誘ってランチからのショッピング、そして聖がオーナーの店でディナーを堪能し、最後はそのまま聖のマンションで、おそろいの部屋着を着てルームシアターで映画を一緒に……と、オフ日の楽しい計画を立てていたのであるが。
それが、犬の登場で流れてしまいそうだ。
「待て、ユウ! これから――」
しかし、真壁はここで聖にべったりと鼻を擦り付けて、精一杯愛らしい仕草できゅるんと上目遣いに目線を送る。
(オレが傍に居ますから安心してください💗)
「ワン、ワン💗」
その様子を見て、ユウは肩を竦めた。
「……ちゃんと、迷い犬を保護していると連絡しなきゃダメですよ、聖さん。それは約束してくださいね。じゃあまた今度、オフに誘ってください」
ユウはニッコリと笑って言うと、後も見ずにスタスタと去って行った。
聖は手を伸ばして引き留めようとするが、さすがにそれも往生際が悪いかと思い止まり、ただ無念そうに歯嚙みをする。
「――クソッ」
聖は舌打ちをすると、不機嫌そうにドカッとイスに腰を下ろした。
(あっさりし過ぎだろう! もっと粘り強く食い下がってくれればいいのに。そうしたら、ワン公を連れて回っても大丈夫そうな店を梯子して、二人で一緒にショッピングも……)
そんな事を考えていたら、犬が心配そうな顔つきになって自分を見上げているのに気付いた。
「おっと。何もお前に怒ってるんじゃないんだ。ただ、いつもオレの片想いってのは辛いもんだなと……ユウに、どう伝えたらオレの気持ちを分かってもらえるのか……」
(えぇ!? 聖さん、何もそこまでユウさんに気を遣わなくてもいいんじゃないですか!?)
聖の独白に、真壁はストレートに驚く。
数多くの男共を手玉に取っている聖が、こうまでユウに甘いとは。
(いくら実子とはいえ、そこはいつものようにズバッと切り捨てるくらいに強気に行かないとダメですよっ。そんなに悩むような事じゃないでしょう)
真壁は、聖の懊悩の理由は、夏フェスのサポートメンバー変更についてだと思っていた。
その事をユウに伝えたくて、聖は言葉を選んでいる内にタイミングを逃したのだろうと。
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