43人が本棚に入れています
本棚に追加
真壁了、再び犬になる
真壁了は、夢を見ていた。
心から敬愛する主人であり、永遠の忠誠を誓っている御堂聖の、その暖かな膝に頭を乗せて心地の良い眠りに落ちる夢である。
「ふふ……気持ちがいいか?」
綺麗な指が真壁の髪を鋤き上げ、頭を優しく撫ぜる。
あまりの心地よさに、真壁は返事をする事も忘れて、聖の膝に凭れたままでうっとりとした。
『聖さん……ああ、なんて良い香りなんだ……』
鼻腔をくすぐる甘い匂いに、真壁は只々夢見心地だ。
つい、口をついて言葉が零れる。
「クウゥ~ン」
(っ!?)
「あはは、甘ったれた声で鳴きやがって。そんなに気持ちがいいのか? ん?」
(聖さんっ?)
慌てて顔を上げたところ、シャンプーの香りがする洗いざらしの髪に、タンクトップにコットンパンツ姿の、思い切りプライベート感丸出しの聖が目に飛び込んで来た。
(え、えぇ!?)
「ワンッワンッ」
「お前、あの時のワン公だろう?」
(聖さんっ? オ、オレはいったいどうしたんですか?)
「クーン、ワウゥン!」
焦って身を乗り出したところ、勢い余って聖の両肩へ手を乗せて、その勢いのまま後ろに押し倒してしまった。
場所がローソファーだったので良かったが――何という失態だ!
(す、すみません、聖さん! お怪我はありませんか!?)
「クウゥ~ン、キュウゥ~ン」
悲しそうな声で鳴く真壁を見上げながら、聖は天女のように微笑んだ。
「なんだ? 尻尾なんか丸めやがって。怒ってないから安心しろ」
最初のコメントを投稿しよう!