真壁了、再び犬になる

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真壁了、再び犬になる

 真壁了は、夢を見ていた。  心から敬愛する主人であり、永遠の忠誠を誓っている御堂聖の、その暖かな膝に頭を乗せて心地の良い眠りに落ちる夢である。 「ふふ……気持ちがいいか?」  綺麗な指が真壁の髪を鋤き上げ、頭を優しく撫ぜる。  あまりの心地よさに、真壁は返事をする事も忘れて、聖の膝に凭れたままでうっとりとした。 『聖さん……ああ、なんて良い香りなんだ……』  鼻腔をくすぐる甘い匂いに、真壁は只々夢見心地だ。  つい、口をついて言葉が零れる。 「クウゥ~ン」 (っ!?) 「あはは、甘ったれた声で鳴きやがって。そんなに気持ちがいいのか? ん?」 (聖さんっ?)  慌てて顔を上げたところ、シャンプーの香りがする洗いざらしの髪に、タンクトップにコットンパンツ姿の、思い切りプライベート感丸出しの聖が目に飛び込んで来た。 (え、えぇ!?) 「ワンッワンッ」 「お前、あの時のワン公だろう?」 (聖さんっ? オ、オレはいったいどうしたんですか?) 「クーン、ワウゥン!」  焦って身を乗り出したところ、勢い余って聖の両肩へ手を乗せて、その勢いのまま後ろに押し倒してしまった。  場所がローソファーだったので良かったが――何という失態だ! (す、すみません、聖さん! お怪我はありませんか!?) 「クウゥ~ン、キュウゥ~ン」  悲しそうな声で鳴く真壁を見上げながら、聖は天女のように微笑んだ。 「なんだ? 尻尾なんか丸めやがって。怒ってないから安心しろ」
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