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(聖さんっ! どうかオレのことは、ただの使い捨ての駒か身を護る盾だと思って頂いて結構ですから! ユウさんの言う事を真に受けて、そんなに悩まないでくださいっ)
「ワン、ワン、ワン!」
だが、そんな真壁の真意が伝わるハズもなく。
何事かを訴えるように吠える犬にフッと微笑むと、聖は手を上げて店員を呼んだ。
「ちょっと、確認したい。先程ワンワンランチを頼んだが……まだ時間は掛るのか?」
「あ、ちょうどお届けする所でした」
店員はイケメン相手に愛想よく答えると、「お待たせしました~」と言って、可愛らしい犬柄プレートに盛られた犬用ランチを持って来た。
「こちら、使っている食材は全て無農薬のオーガニックとなっております。お肉は国産に拘り、宮城県産の森林鶏です。ごゆっくりどうぞ……わぁ、立派なボクサー犬ですね!」
店員の賛辞に、聖は満更でない表情になる。
そんな聖に、ユウはゴホンと咳払いをして釘を刺した。
「その犬、これからどうする気ですか? 迷い犬なんでしょう?」
「あ――そうだな。どうやら、マンションの住人の誰かが逃がしたようだ」
「それなら、すぐにコンシェルジュを通して引き取ってもらわないと。情が移ったら離れがたくなりますよ」
聖の現在の住まいは、コンシェルジュ付きの豪華マンションだ。
ならば、それに見合うだけのサービスは当然受けるべきだろう。
この迷い犬にしたってそうだ。
何も、聖が保護したからと言って、散歩までしてやる義理は無いだろう。
(聖さんはとても優しいし、情が厚い人だから。このままこの迷い犬と一緒にいたら、別れる時が大変だぞ)
絶対に、辛い思いをして泣くのが目に見えている。
聖は、ユウの前で泣いたことは無いが、その位はお見通しだ。
「聖さん、迷い犬の件は、ちゃんと連絡したんでしょうね?」
「う……」
ユウの詰問に、聖はパッと話題を変えようとした。
「そんなことよりも、夏フェスの件は考えてくれているか? サポートメンバーが……」
「聖さん!」
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