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ユウの強い声に、聖は気まずそうに視線を逸らす。
今の一連の仕草で、もう自白したようなものだ。
「――迷い犬を保護しているって、連絡はしてないんですね?」
問い質すというよりも、優しく諭すような口調に『うっ……』と聖は息を詰めた。
そうして、観念したように白状する。
「ああ、そうだ。やっぱりこうして再会すると、何だか別れ難くてな……」
「やっぱり」
フゥと溜め息をつき、ユウは床に座っている犬へと視線を落とす。
犬はどこか心配そうな顔つきでキュンキュンと小さく鳴いていて、何だか可哀想だ。
出されたランチにも口を付けずに、ユウと聖の顔を交互に見てオロオロしている。
(やっぱり、知らない人間に付き合わされて不安なんだろうな。仕方がない。ここは、オレが一肌脱ぐしかないか)
ユウはそう答えを出すと、おもむろに口を開いた。
「だったら、オレが預かりますよ」
「っ!」
「聖さん、今日はたまたまオフだから良いようなものの、普段は仕事で忙しいでしょう? それに比べて、オレは自由業みたいなモンだし。自分の時間は幾らでも調整が効くんだから、犬はオレが預かりますよ」
「しかし――」
「もちろん、本来の飼い主が見付かるまでです。マンションの敷地内で保護したのだから、コンシェルジュに通知して一日か二日もあれば直ぐ分かるでしょう」
「う……」
確かに、その通りだ。
だから、聖はそれをしなかったのだ。
自分を真っ直ぐに慕ってくれる犬を、どうしても手放したくなくて……。
そんな聖の内心を察したように、ユウは説得を始めた。
「聖さんの気持ちは分かりますが、このまま一緒に居ればどんどん別れが辛くなるだけですよ?」
「でも、もしかしたら迷い犬では無くて、捨て犬かもしれないじゃないか。だったら、保護したオレが責任をもって飼うことも――」
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