イタリアの夜は突然に

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◇  イタリアはローマ市街地の北側にあるウルベ空港にやってきている。ここからスパーダ通りを一キロも行けば、街の中だ。 「久しぶりだなこの感覚も」  ルワンダを出て戦場以外の場所に来た、こうやって自由に外を歩くのは本当に懐かしいくらいに久しぶりだった。国際指名手配が解け、日本の実家に帰る途中。レティシアと現地で合流することになるのはもう少し先のことで、今は出張中だというハラウィ中将を探しにやって来ていた。  単独というわけにはいかず、護衛を一人だけ連れてきている。場所がイタリアだったのでアサド先任上級曹長を供に指名していた。イタリア語の話者は三人、彼とサルミエ少佐とオビエト先任上級曹長だ。三人のうちだれが護衛に適しているかと問われたら、殆どの部員がアサドだと応えるはずだ。 「平和の感覚ですか、それとも文明や芸術でしょうか」  軽いジョークを交えて街並みに視線を送る。二人ともラフな格好で、スラックスにシャツを着ているだけ。暖かい地域で天気も良い、アラフォーのおやじ二人が歩いていても特に注目を浴びることもない。 「大体全部が恋しいものだな」  苦笑して新鮮なこの感覚を楽しむ。別に何をするわけでもない、レバノンに尋ねるとハラウィ中将は、閣僚として政府の代表でイタリアに交渉に出張しているとのことで、驚かせてやろうと突然やってきている。探すつもりになればすぐにでも居場所は判明するはずだ。 「ではカフェで一杯味わってからにしますか」 「そいつは名案だ」
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